精巣腫瘍

精巣にできる腫瘍には間質細胞腫、精上皮腫(セミノーマ)、セルトリ細胞腫の3つがあります。




それぞれの特徴は以下のようになっています。

間質細胞腫

・ 良性腫瘍
・ 精巣腫瘍の中で一番多く約40%を占める
・ 約半数が両方の精巣に発生
・ 元は男性ホルモンをつくる細胞だが
  それに関連した症状が出ることはすくない

精上皮腫

・ 精子の元となる精上皮由来の腫瘍
・ 転移率は5~10%
  主にそ径・腸骨・腰下リンパ節などに転移する
・ 転移した場合は放射線や抗がん剤治療を行う
・ 多くが片側の精巣に発生する(両側にできるのは約10%)
・ 潜在精巣(陰睾)では発生率が高まる

セルトリ細胞腫 

・ 精細胞の支持や栄養供給などを行うセルトリ細胞由来の腫瘍
・ 転移率は10%前後
  傍大動脈や腸間膜リンパ節等の局所リンパ節に転移する
・ 転移した場合は放射線や抗がん剤治療を行う
・ 多くが片側の精巣に発生する(両側にできるものは約10%)
・ 潜在精巣(陰睾)では発生率が高まる
・   約30%の症例でエストロゲン中毒※が見られる



※エストロゲン中毒
・・・腫瘍細胞が分泌するエストロゲン(女性ホルモン)の作用で
   反対側の精巣委縮、乳房の腫大、前立腺過形成、
   毛包・皮脂腺の委縮による脱毛や皮膚委縮、骨髄抑制
   などの症状がみられる




精巣は白膜という丈夫な膜で覆われているためお腹の中で腫瘍化した場合も周囲に腫瘍細胞がしみ込んでいくことは少なく、腫瘍を取りきることができます。
また、血流に乗って腫瘍細胞が転移することも少ないといわれています。

しかし、精上皮腫とセルトリ細胞腫はリンパ管を伝って転移することがあり報告により異なりますが、その確率は5~15%程度です。


手術例

精巣腫瘍

写真は潜在精巣のセルトリ細胞腫です。

このワンちゃんは毛が抜けるということでご来院されましたが精巣が片側しか降りていなく、その精巣は委縮していたためエストロジェン中毒による脱毛が強く疑われました。

精巣腫瘍は早期に対処すれば治せることが多いため精巣が腫れてきた時や潜在精巣の子で毛が抜けたり乳房が張ってきたときは早目に受診してください。